◆3/23〜3/29「持続可能な水資源政策に向けて」連続企画 報告概要

(『ダム撤去』出版記念国際シンポジウム)

  3/23〜3/29にかけて各地で行われた「持続可能な水資源政策に向けて」 の国際シンポジウムは大変評価の高い形で終えることができました。皆様のご 協力に改めて感謝申し上げます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
River Policy Network  代表 太田勝之


-  実施概要-

○3月23日   徳島吉野川流域

吉野川河口視察: (工事中・計画中の架橋の説明と干潟の生物などの説明を受ける)
第十堰視察  : (約40分第十堰の歴史と変遷の説明)
藍屋敷視察  : (吉野川地域の伝統産業である藍を作っていた屋敷・河川との
          関わりについての説明を受ける)
善入寺島視察 : (吉野川にある中州)
池田ダム視察 : (ジョンソン氏は、講演会準備のため不参加)
講演会    :  (ウェグナー氏合流  参加者数200人)
懇親会    : (食事をしながら歓待・地元の方や参加者と情報交換や質疑)

○3月24日    徳島〜熊本

藍染め体験  : (全日程で唯一の娯楽・両氏とも感激の様子その後熊本へ移動)
メディア取材 : (八代駅前喫茶店ミックにて・熊本日日新聞・読売新聞)
人吉旅館着  : (八代より球磨川上流の人吉へ移動)
歓迎会    : (地元の方や漁協の方と情報交換や質疑応答)

○3月25日     熊本 球磨川流域

人吉旅館を出発: (球磨川沿いを下流に向かいながら各要所で説明を受ける)
瀬戸石ダム視察: (約40分説明・見学)
荒瀬ダム視察 : (約1時間説明・見学)
遥拝堰視察  : (約15分説明を受ける・利水先の説明などを受ける)
球磨川堰視察 : (漁協による鮎放流用稚魚の捕獲作業を見学)
シンポジウム : (参加者500人)
懇親会    : (当日参加者・地元の方たちとの交流と情報交換会、簡単な
          質疑応答)

○3月26日     熊本〜名古屋

専門化向け研修会  (参加者45人)
メディア取材    (小学館雑誌ビーパルによる。球磨川を背景に写真撮影後名古
                            屋へ)

○3月27日   岐阜 徳山ダム

大垣駅より徳山ダム:(移動バス中で、近藤ゆり子さんより説明と簡単な質疑応答)
ダムサイトで説明 :(パネルなどを用いた説明、サイトの上下2箇所で説明を受ける)
説明会と質疑応答 :(管理棟にて説明・質疑応答共にとても誠実な対応を受ける)
メディア取材   :(NHK・中日新聞・朝日新聞)

○3月28日   名古屋

シンポジウム   :(参加者200人)
勉強会      :(参加者100人)(白熱した議論が展開されました。)
懇親会      :(当日参加者たちとの交流と情報交換、簡単な質疑応答) 

○3月29日      

松本から牛伏川へ :(名古屋より移動中田口康夫さんより簡単な現状の紹介を受ける)
牛伏川の視察   :(砂防堰堤一部撤去の説明を受ける・合意形成の仕方にウェグナー、
           ジョンソン両氏共に高い評価)
懇親会      :(地元の方々との交流と情報交換)

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◆帰国されたジョンソン博士、ウェグナー氏が早速報告書とメッセージを 送ってくださいました。今回は先ずはじめにウェグナー氏の熱いメッセージを お届けします


   = デビッド・L・ウェグナー氏からのメッセージ  =
                   2004 April  デビッド・L・ウェグナー (元開墾局研究者 「ダム撤去」執筆者)  過去数週間にわたって、日本の川にとって重要で歴史的な第一歩が記された。市民、 建設業者、研究者、政府の職員などが対話を始めたのだ。後世、この第一歩は日本の 河川再生・復元に向けての新たな幕開けであったと記憶されるであろう。 そして、 それは今後の健全な議論、審議へと発展していくことだろう。この対話は新たに結成 された「リバーポリシーネットワーク」の努力と献身によって達成された。河川の再 生に向けて、さまざまな意見や異なった方法論を持つ人々が共に働きかけることによ り、オープンなコミュニケーションを行い合意点を明らかにしつつ、議論が進められ ていくことだろう。それは決して妥協に基づくものではなく、科学的データや社会的 な必要性、価値観を明確にしていくことにより積み上げられていくものに違いない。    川とは風景を作る力であり、人々に活力を提供し、国家の経済的なエンジンともな る。日本の歴史を鑑みても、人々は川に対して明らかに大きな価値を認めている。 人々は川との関係を築いてきた。川は季節ごとに魚を運び、交通手段を提供し、また 耕地や河口に栄養分も与えてくれた。ところが時が経つにつれて人々は川を支配でき るものとみなすようになり、川に対する敬意の念を失ってしまった。このようなこと が川を分断し、究極的には昔から続いた漁業の喪失を招き、河口や氾濫原への栄養分 の供給を減らしてしまうダムや水の流れの操作へと繋がっていった。    今回のシンポジウムに関わったすべての人々は、このような日本の川を取り戻すた めの旅を始めたのである。この試みは、政府、政治家、研究者、そして市民が共に働 きかける関係を樹立することにより成し遂げられるであろう。この旅は決して容易で はないし、時間もかかるだろうが、しかし、この旅を始めた日本の人々の情熱の力で 達成されるであろう。私は、一連の勉強会やシンポジウムに参加された人々が示した 議論や情熱にとても勇気づけられている。    さて次のステップであるが、今回の新たな展開を契機として、日本の川の将来をめ ぐるオープンで透明性の高い議論を構築していくことが必要となるであろう。過去に おいては困難もあったが、いま踏み出した第一歩は、生態系の再生、および維持可能 な水資源開発という将来像を確信させるものである。今後もリバーポリシー ネット ワークは対話と議論のための、そして最も重要な将来の河川政策の構築のための貴重 なフォーラムを提供していくものと受けとめている。

>>>>>>>  今回のシンポジウムに対する新聞各社の掲載記事の紹介 <<<<<<<

●《徳島》2004.3.26 徳島新聞より  「ダム機能見直し提言 米国の専門家 河川管理考える講演」  米国の河川政策に詳しい専門家二人を迎え河川管理の在り方を考える 講演会(吉野川中流域環境ネットワークなど主催)が、鴨島町鴨島のセント ラルホテル鴨島で開かれた。県内外から約200人が出席。ダム撤去などが 進む米国の現状などに耳を傾けた。  講演したのは元米国陸軍洸工兵隊本部最高幹部のジェームズ・ジョンソン 博士と、環境コンサルタントのデビッド・ウェグナーさんの二人。 ジェームズ博士は、工兵隊本部が行っている水資源開発などの公共事業につ いて、かつては土木工学的な見地だけから工事を行っていたが、環境、経済 、地域振興など多目的な視点から事業を行うようになったと紹介。 デヴィッドさんは老朽化や環境面からダムが撤去されている米国の現状につ いて「ダムの役割や機能をもう一度見直す必要がある。そのためには、さま ざまな分野の研究者、市民、行政などが科学的に議論しあえる場を作り、 問題を解決していくべきだ」と話した。  質疑もあり「ダムにたまった土砂の除去に多くの費用がかかる」 「ダム撤去のメリットは」などの質問に「たい積物を取り除かず安定化させ てしまう方法もある」「下流のダムになるほどたい積物に有害物質が含まれ る可能性が出てくる。撤去は水質浄化にもなる」などと答えていた。  二人は大阪市に事務局を持つ環境NGO[リバーポリシーネットワーク」 の招きで来日。徳島を皮切りに、国内初のダム撤去が計画されている熊本県 など四県で講演や現地視察を行う。 ●《熊本 荒瀬ダム》2004.4.7熊本日日新聞より <社説>「 荒瀬ダム撤去 さらに議論の透明度高めよ 」  「ダムを撤去したら二年で魚が戻り、漁師も帰ってきた」―八代郡坂本村 の球磨川にある県営荒瀬ダム撤去を考えるシンポジウムが八代市で開かれ、 主催の市民団体が招いた米国のダム撤去の専門家らが体験談などを話した。 「川は回復し始めると、自ら加速し、意外と早く回復する」との話も興味深 かった。  米国には現在、高さ六フィート(一・八メートル)以上のダムが七万五千 基以上あり、この三十年間ほど新しいダムは造られていないという。十年ほ ど前から、環境への影響やダム本体の老朽化、管理コストの上昇などの理由 で撤去を含む見直しを積極的に進めており、五千以上の小規模ダム(貯水量 十二万立方メートル以下)が撤去されたといわれる。  シンポジウムに招かれたジェームズ・ジョンソンさんは“世界最大の公共 事業機関”といわれる陸軍工兵隊の元幹部、デビッド・ウェグナーさんは水 資源開発コンサルタントで、それぞれダム撤去の専門家として第一線で活躍 している。 ジョンソンさんは「球磨川上流は非常にきれいだったが、下る につれコンクリートが目立ったのが印象的。ダム去が環境面にどんな影響を 与えるのか、水系全体の情報を集め、あらかじめ知っておく必要がある」。 ウェグナーさんは「ダムは人類の発展に貢献してきたが、環境への影響や経 済的な理由で、社会的に受け入れられなくなってきた。十六カ国で撤去が始 まっている」などと述べた。  荒瀬ダムの撤去は、昨年十二月定例県議会で潮谷義子知事が地元の「元の 川に戻して」という強い要望に沿う形で表明した。九州電力との電力受給契 約が切れる二〇一〇(平成二十二)年三月末まで水利権を七年間更新し、そ の後、撤去されることになっている。  現在、県荒瀬ダム対策検討委で撤去の具体的な工法や環境への影響調査の 進め方などを協議している。すでに撤去の工法として発破などの四案を示 し、今後、工法の絞り込みやたい積した土砂の処理などを検討することにし ている。また、県企業局は二月にダム湖の水位を下げてたい積した土砂や川 岸の調査を実施し、土砂の流下試験も行っている。  しかし、四万七千五百立方メートルものダム本体のコンクリートをどう処 分するか、約百万立方メートルのたい積した土砂はどうするか。さらに下流 や八代海への環境影響、不安の声が出ている農工業用水確保の問題、撤去後 の球磨川の整備など、検討すべき課題は山積している。  また、坂本村から「上流の瀬戸石ダムの撤去と下流の遥拝堰の改修」「自 然に近い川岸にしてほしい」「荒瀬ダムに代わる生活用架橋の建設」などの 要望が出ているのをはじめ、八代市からも利水や環境面からの意見・要望が 出ている。ダムの撤去は日本では初めてだけに、専門家や地元代表との話し 合いはもちろん、流域住民や川に深くかかわる人たちの話も取り入れ、万全 を期す必要がある。  アメリカの専門家二人は、「地元住民も、行政も、技術者も全員が“勝 者”となるために、お互いのコミュニケーションを深め、議論や意思決定の 過程の透明度をさらに高めることが重要」と強調した。ダム撤去に向け今 後、議論が本格化していく。傾聴すべき言葉である。 ●《徳山ダム》2004.3.28 中日新聞より 「データ再検を」徳山ダム、米科学者が視察   米国で河川政策にかかわる科学者二人が27日、岐阜県藤橋村で建設が進む 徳山ダムを視察した。治水機能が約35年前の計画に基づいて設定されている ことに「新しいデータと照らし合わせ、適切かどうかをもう一度チェックす る必要がある。外部の機関が見直して見解を出すべきだ」との考えを示した。  二人は、昨年まで陸軍工兵隊で河川管理の計画立案に携わったジェームズ ・ジョンソンさん(63)と河川工学者のデヴィッド・ウェグナーさん(52)。  市民団体「リバーポリシーネットワーク」(事務局・大阪市)が、ダムに 頼らない河川政策へ転換しつつある米国の現状を紹介しようと招いた。  この二人は事業を進める水資源機構から説明を聞き、活断層が最短距離で 約1.8キロ近くにあることや、砂などの堆積(たいせき)物がたまりやすい ことに懸念を示したが、機構は「対応できる設計」とした。  ウェグナーさんは、 「ダムの問題は、行政に非政府組織(NGO)や市民が加わり、議論していく ことが大切」と話した。 二人も出席し、28日午後1時半から名古屋市中村区の県中小企業センター でシンポジウムが開かれる。参加費千円。 ●《徳山ダム》2004.3.28 朝日新聞より 「米の研究者ら徳山ダム視察 市民団体が招待」   藤橋村に建設中の徳山ダムに27日、堤防の設計などを行う米国陸軍工兵隊本部の 計画・政策部長だったジェームズ・F・ジョンソンさんと、元米国開墾局研究者の デヴィッド・L・ウェグナーさんが視察に訪れた。 大阪市の市民団体 「リバーポリシーネットワーク」(太田勝之代表)が招待した。  水資源機構の職員からダムの構造や工事の進み具合などについて説明を受けると 、2人はダム上流の森林管理の重要性や、ダムの近くに活断層がある危険性などを 指摘した。 ダムの前提となる治水計画が68年にできたものだと聞くと「古すぎる」 と驚いた表情を見せた。 視察後、ウェグナーさんは「治水計画が正しいのか、新しいデータを使ってチェックし たほうがいいと思う」と話した。 ●《名古屋》2004.3.29 中日新聞より 米国の「ダム撤去」検証  名古屋でシンポ 科学者「影響調査を」    米国の科学者を招き持続可能な水資源政策について考えるシンポジウム 「アメリカの“ダム撤去”から学ぶ」が28日、名古屋市中村区の県中小企業センタ -であった。  市民団体「リバーポリシーネットワーク」(事務局・大阪市)の主催。 「ダム撤去」の著書である河川工学者のデヴィッド・ウェグナーさん、米国の 陸軍工兵隊で河川管理の計画立案に携わったジェームズ・ジョンソン=写真=らが 、米国の河川再生事業の実例などをスライドやデータを用いて紹介した。  ウェグナーさんによると、米国には高さ10メートル以上のダムが約8万基あり、 これまで約千基のダムが生態系への悪影響や老朽化、維持費用の懸念などから撤去さ れた。  「ダムは治水やかんがい、水力発電などさまざまな目的で経済発展に貢献してきた が、現在は川を『再生・復活』させることに河川政策の視点が変化してきている。と 米国の状況を報告。「健康な川は生態系にとってのエンジンだ」と、環境保護が河川 政策に欠かせない視点であることを訴えた。  一方で「ダムをやたらに撤去すればよいというわけではなく、撤去によって逆に絶 滅危ぐ種の魚が激減してしまった例もある」と指摘。「ダムの撤去でどんな影響が出 るのか、しっかりと調査し、政府や学者、市民、企業などが対話を重ねることが大 切」と話した。 ●《長野》2004.3.30信濃毎日新聞 より 「ダム撤去を提唱する米研究者 松本の牛伏川を視察」   ダムの撤去などを提唱し、河川再生活動に取り組む米国人、ジェームズ・F・ジョ ンソン博士(62)とデヴィッド・L・ウェグナーさん(52)が29日、松本市内田の牛 伏川を視察した。県が自然の流れに近づける工法を導入した砂防工事現場などを回り 、水中の石を裏返して昆虫の生息を調べたりした。  二人は、環境に関するコンサルティングをしている研究者。河川再生に取り組む非 政府組織「リバーポリシーネットワーク」(事務局・大阪)が主催する「ダム撤去」 シンポジウムの一環で、23日から全国各地を講演やダム視察で訪れ、長野県は5カ所 目。この日は、松本市に事務局がある「水と緑の会」「渓流保護ネットワーク」の関 係者や松本建設事務所職員が案内した。  ウェグナーさんは、牛伏川について「河川や生態系再生の第一歩としては非常に素 晴らしい状態」と評価。ジョンソン博士は「河川再生は日本では非常に労力を要する 印象を受けた。法整備が必要だ」と話していた。 ///////////////////////////////////////////////////////////////////////////
主催/問合せ先:リバーポリシーネットワーク(RPN) /〒550ー0014 大阪市西区北堀江1-21-11-3B TEL. 090-7952-2882 (高木)  FAX.06-6543-8456  E-mail rpn@r6.dion.ne.jp  国際シンポ支援カンパ募集:郵便振替 00830-6-101345 http://www.mm289.com/RPN/
   

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